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赤ちゃんの発達に欠かせない「DHA」

魚の油に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)は、脳や神経の発達に欠かせない栄養素。特に、発達期の赤ちゃんにとって、なくてはならない大事な成分です。

 

 


 

  

前回、ママと赤ちゃんの健康のために、魚に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が大切だ、というお話をうかがったのですが、どのような効果があるのかもっと詳しく教えてもらえますか?赤ちゃんの頭がよくなるのかしら。

 

というよりは、DHAは「脳や神経の発達に欠かせない栄養素」であると言ったほうがより適切ですね。

DHAは人間の身体の中でも、特に大脳に多く存在していることが知られています。人間の脳は、水分を除くとその約60%が脂質でできています。その大部分が「リン脂質」と呼ばれる物質で、さらにその構成要素の中でDHAが大きな割合を占めているんですよ。

 

脳にはそんなにたくさんのDHAが存在しているのですか。それは何かとても重要な働きをしていそうですね。

 

赤ちゃんがお母さんのおなかの中にいる胎児期から、誕生後の乳児期にかけて、脳はぐんぐん発達していきます。その時期に、脳の重要な構成要素であるDHAを体内に取り入れることがいかに重要なことかというのがわかりますよね。

 

妊娠中に「葉酸」が必要だというのはよく耳にしますが、DHAも大事な栄養素なんですね。

 

葉酸が、妊娠初期に赤ちゃんの脳の基本部分を形成するために必要な栄養素であるのに対して、DHAは主に、妊娠後期において赤ちゃんの脳を正常に発達させるために必要な栄養素であるといえます。

妊娠後半の3ヶ月間にお母さんが摂取した栄養素は赤ちゃんの体に吸収され、各組織に蓄積されます。この重要な時期の前に産まれてしまった場合、DHAの蓄積量が少ない状態で産まれてくるので、そのままでは正常な神経の発達ができないおそれがあるのです。

 

それは困ります・・・早産で産まれた赤ちゃんはどうすればいいんでしょう?

 

大丈夫、安心して。お母さんが青魚などDHAをたくさん含む食品を食べれば、母乳にそのDHAが移行します。また、DHA配合の粉ミルクも広く販売されていますから、そういったものから摂取すれば問題ありません。

 

よかった!

それで、肝心の効果なんですが、DHAを摂るといったいどういう効果があるのでしょうか?

 

単純に「頭がよくなる」とは必ずしもいえませんが、DHAをはじめとする長鎖不飽和脂肪酸を添加した粉ミルクで育った赤ちゃんは、無添加の普通の粉ミルクで育った赤ちゃんに比べて発達指数(知能や姿勢・運動、社会性といった総合的な精神的発達のレベルを示す指標)が高かった―というイタリアの研究報告があります(*1)(図1)。

 

 

  

図1.長鎖脂肪酸添加粉ミルクを与えた乳児の生後4ヶ月における発達指数

 

DHAを多く含む粉ミルクを与えた赤ちゃんと、通常の、何も添加しない粉ミルクを与えた赤ちゃんとで生後4ヶ月時点の発達指数を調べて比較したところ、DHAを多く含む粉ミルクを与えた赤ちゃんたちのほうが平均点が高かったとのことでした。

まあ、その赤ちゃんたちがその後、果たして学校の成績もよかったのかどうかということになると、また別の話になってくるのでしょうけど・・・。

 

「おさかなを食べると頭がよくなる」という説には、このようなデータの裏づけがあるのですね。

そういえば、目も脳と同じく神経組織なんですよね。だったらDHAは、目の働きにも効果があるのでしょうか。

 

なかなか鋭いところに気がついたね。そのようなことに関心を持っている研究者も多くいて、論文もたくさん報告されています。

 

生後6ヶ月の赤ちゃんに、DHA 115mg(100gあたり)を含む卵黄を使った離乳食を6ヶ月間食べさせたところ、視覚機能が向上したという報告もあります(*2)(図2)。

 

図2.乳児の発達初期段階における視力向上に対するDHA強化離乳食の影響

※グラフ注

logMAR値とは、「対数視力」とも呼ばれ、視力をあらわす指標のひとつです。

一方、日本で一般的に用いられている視力の指標は「小数視力」と呼ばれているものです。 

目安として、logMAR値 0.1は少数視力0.8に、logMAR値0.3は小数視力0.5に、logMAR値0.4は小数視力0.4にそれぞれ相当します。

 

 

 

研究開始の生後6ヶ月時点では、通常の離乳食で育てた赤ちゃんとDHAを豊富に含む離乳食で育てた赤ちゃんとで「logMAR値」(視力の指標、値が小さいほど視力が高い)に差は見られませんが、6ヶ月後の生後12ヶ月時点には、DHA強化離乳食で育てた赤ちゃんたちのほうが視力が高くなったということです

 

 

 

子どもの頃からテレビやゲーム機の画面を見る機会が増えたからでしょうか、最近子どもの視力が低下傾向にある模様です。

 

 

図3.裸眼視力1.0未満の子どもの割合食事やサプリメントからの栄養補給で、視力低下が少しでも軽減できればいいですね。

 

DHAは子どもの脳や視力だけではなく、大人にも効果があるのではということが示唆されています。

たとえば、大学生に1日1.5~1.8gのDHAを3ヶ月摂取させた後に心理テストを行ったところ「攻撃性」が抑えられていた(*3)という報告や、男子大学生スポーツ選手に1日1.5gのDHAを35日間摂取させたところ、両眼の動体視力が向上したという報告もあります(*4)

 

「心を穏やかにする」効果も期待できるんだ!DHAは心の健康のためにもぜひ摂りたい栄養素なんですね。

 
DHAはEPAと同じく、正常な体の働きに欠かせない「必須脂肪酸」。人間の体内ではほとんど合成することができないので、青魚などの食事から摂取したり、サプリメントで補ったりして、積極的な摂取を心がけてくださいね。

 

 

 

参考文献

1) Carlo A. et al, Neurodevelopmental quotient of healthy term infants at 4 months and feeding practice: the role of long-chain polyunsaturated fatty acid. Pediatric Research Vol.38, No.2; 262-266 (1995)

2) Hoffman D. R. et al, Maturation of Visual Acuity Is Accelerated in Breast-Fed Term Infants Fed Baby Food Containing DHA-Enriched Egg Yolk. Journal of Nutrition  Vol. 134, No. 9; 2307-2313 (2004)

3) T Hamasaki et al. The effect of docosahexaenoic acid on aggression in young adults. A placebo-controlled double-blind study. The Journal of Clinical Investigation  Vol.97, No.4; 1129-1133 (1996)

4) 石垣ら. 1ヶ月間のDHA摂取がスポーツ選手の視覚機能に及ぼす効果 愛知工業大学研究報告 第41号B; 185-188 (平成18年)

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