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高地トレーニングにはEPAが欠かせない?

年々発展しているスポーツ栄養学の世界。魚の油に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)が持久力を高めるという意外な効果がわかりつつあります。

 


 

今日はスポーツの話題をひとつ紹介しましょう。

マラソンのトップランナーが持久力を強化するために高地トレーニングを取り入れているのは知っていますか?

 

オリンピック前には代表選手の合宿がニュースで取り上げられていますよね。

 

そうですね。では何で高地トレーニングが有効か知っていますか?

 

酸素が薄いから心肺能力が鍛えられるのかなあ?

 

おおざっぱに言うとそうですね。高地では酸素が薄いので血液中の酸素量が少なくなります。この低酸素の刺激が赤血球を増加させるエリスロポエチンというホルモンの分泌量を増やします。結果的に酸素を運搬する赤血球の数が増え、低地に戻ってからもしばらくは赤血球数が多い状態が維持されているので持久力が高まるわけです。

 

なるほど。血液を鍛えているようなものですね。高地トレーニングの重要性がわかりました。

 

しかし必ずしもいいことばかりではないんです。赤血球数が増えると血液の粘度が高まってしまうので、高地トレーニングのような激しいトレーニングでは心臓への負荷が増えますし、血流にも悪影響を及ぼす可能性もあります。そこでニッスイではサラサラ成分であるEPA(エイコサペンタエン酸)に着目し、EPAが高地トレーニング時に有効であるかどうかを検証する実験を行いました。

 

そうなんですか。詳しく説明してください。

 

実験では、国内のエリート男子駅伝選手12名に協力してもらいました。平地トレーニング10週間と高地トレーニング(標高3000m3週間の計13週間にわたってEPA1日あたり1.6g)を含む魚油カプセル、もしくはオリーブ油の入った擬似カプセルを摂取してもらいました。

 

EPA1.6gといえば、いわしを130g食べた時の量と同じくらいですね。

 

被験者の血液を細かいフィルターに通して、30秒間で通過する血液量を測定したところ、EPAを与えた群では高地トレーニング前に比べて高地トレーニング後で、通過する血液量が増加していました(図1)。一方で擬似カプセルを与えた群ではそのような変化は観察されていません。グラフ中のp < 0.05というのは2つのデータが同じである確率(p)が5%以下という意味で、つまりは2つのデータは統計的に有意な差があるということを示しています。

 

k_3-1.jpg

 

EPAを摂取することで、血液が小さな穴を早く通過できるようになったということですか?

 

そうです。これはEPAにより血液中の赤血球が柔らかくなったことを表しています。赤血球が柔らかくなることで、細い血管でも通りやすくなり、体の隅々にまで酸素を運べるようになることがわかっています

 

なるほど。でも高地トレーニングをすると赤血球数が増えて血液の粘度が高まってしまうんですよね?

 

そうです。擬似カプセルを与えた群では高地トレーニングにより赤血球数が増加しています。しかし、何とEPAを与えた群では赤血球数は変化しなかったんです(図2)。

 

k_3-2.jpg

 

そうなんですか。つまりEPAを摂取すると高地トレーニングの悪い側面が出てこないと・・・。

 

そう。EPA摂取により赤血球が柔らかくなった結果、赤血球の数を増やさなくても体の隅々への酸素の供給が十分にできるようになったんです。EPAを摂取することで、激しいトレーニングでも安全かつ効果的に実施でき、結果として選手の心肺機能の向上、持久力の向上につながると考えられます。

 

サラサラ効果って運動にも重要だということがわかりました。

 

次回もEPAと運動能力の関わりについて一般人の場合を例にしてお話しますよ。お楽しみにして下さい。

 

参考文献

 高地トレーニングにおける赤血球膜機能に及ぼす魚油濃縮物投与の効果

小林 悟a)、高岡郁夫b)、沢木啓祐b)、寺野 隆c)、平井愛山d)、藤代成一e)、斎藤 康f)、中島秀司g)

a)東京医科歯科大学医学部附属病院、b)順天堂大学、c)千葉市立病院、d)千葉県立東金病院、e)国保成東病院、f)千葉大学大学院医学研究院、g)日本水産株式会社 

脂質栄養学, Vol.12, No.1, pp.75-84, (2003)

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